臆病者のための株入門

 

臆病者のための株入門 (文春新書)

臆病者のための株入門 (文春新書)

 

 株というと、なにやらかっちりネクタイを締めたサラリーマンが黒い画面にむかって難しい顔をしているか、はたまた一晩で全資産を溶かして人生終了した! というイメージがまず思い浮かぶ。
要するに、私のようなエリートでもギャンブラー気質ではない人間が近づくなかれ、ということだ。
では何故、この本を手に取ったか。答えは単純である。私が預けている普通預金の金利は、何と年0.020%。たとえ一千万を預けていても、年二千円しか利息がつかない。ちょっとズボラなひとなら、引き出し手数料で年間このくらい使ってるんじゃないだろうか。
まさか、資産を年々倍にしていきたいとは思わない。(倍になったところで知れているが……)ただ、もう少し利益があがる資産運用方法はないだろうか。
そう思ったのだ。
この本は、上記のとおりの金融オンチな私にも、わかりやすく株や各種資産運用について教えてくれた。詳しくは読んでもらうとして、結論を言うと、私には一日のほとんどをチャート表を胃を荒しながら見て暮らすのは無理ということだ。才能がないせいもある。将来性のある会社を研究して見つける努力もしたくない。比較的安全な運用方法も書いてあるが、それが今でも通じるかは要学習。
ただ、金融の世界には少し心を惹かれるものがあった。財産が増やせるからではない。
これは、大人が作った究極のファンタジーだからだ。世界のすみずみまで探索をし、あらゆる手段で財にしつくされ焦土と化しかけている現実を捨てて逃げ込んだ仮想空間。ネット上で持っているものが、ただの幻想だと知らないふりをしている人たちでなる究極に象徴化された世界。資本主義の、最後の拠り所。
とにかく、参加するかは置いといて、造詣を深めたくなってはきた。人間みんなが参加せざるを得ない、お金ゲームその渦中について。
深淵を覗き込むとき、深淵もまた……とは、ならないようにしたいものだが。