2016-01-01から1年間の記事一覧

愛を乞うひと 著:下田治美

乞うとは何か。相当に追いつめられた人が、生きるため自分を貶めてでも相手にねだる行為だと私は定義する。 乞うものは、なにも金銭や食物だけとは限らない。この物語で、主人公が乞うていたのはタイトル通り、愛だ。もしも乞う相手が恋いうる人、すなわち他…

世界のどこにいても、見つけだしたい誰か【君の名は。感想】

「君の名は。」を見た。 見終わった後に、無性にどこかにいる誰かを探しに行きたくなった。 主人公、三葉と瀧の二人のなれそめは、ある日互いが入れ替わってしまったことによる。それからは週に2、3週という結構なハイペースで入れ替わりが起こる。スマホ…

あの日、どこかであった物語【シン・ゴジラ感想】

今さらながら、シン・ゴジラの感想を書く。 各所で絶賛されているとおり、垣根なしに面白かった。開始すぐからゴジラが覚醒、それからカルピスの原液を樽で飲みんさい飲みんさいと言われるような濃厚な映像体験が私たちを襲う。伸ばそうと思えば、二時間映画…

マイインターン【映画感想】

マイ・インターン ブルーレイ&DVDセット(初回仕様/2枚組/デジタルコピー付) [Blu-ray] 出版社/メーカー: ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント 発売日: 2016/02/10 メディア: Blu-ray この商品を含むブログ (11件) を見る 綺麗なハンカチを持って…

【映画】アーロと少年

観客を千尋の谷ならぬ「いたたまれなさ」の底に突き落とす映画だった。 主人公である恐竜の子アーロが生きているのは、もし1600万年前隕石が地球に落ちず恐竜が繁栄を続けていたらというパラレルワールドである。 そこで恐竜は人間に成り代わるかのよう…

キャロル【映画感想】

私たちを恋に陥れてくれる、なんとも美しい映画だった。 見終わった後に、妙な高揚感とセンチメンタルを感じてしまう。これぞまさに恋愛映画だ。 舞台は1950年代のニューヨーク。百貨店で働く可愛らしい女の子テレーズは、客であるブロンド美女、キャロ…

臆病者のための株入門

臆病者のための株入門 (文春新書) 作者: 橘玲 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2006/04 メディア: 新書 購入: 31人 クリック: 229回 この商品を含むブログ (194件) を見る 株というと、なにやらかっちりネクタイを締めたサラリーマンが黒い画面にむかって…

憎しみと赦しのどちらを選ぶか。それがその人の人生の物語となる    「シャンタラム」 G・D・ロバート 著 田中俊樹 訳

シャンタラム〈上〉 (新潮文庫) 作者: グレゴリー・デイヴィッドロバーツ,田口俊樹 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2011/10/28 メディア: 文庫 購入: 11人 クリック: 374回 この商品を含むブログ (39件) を見る はじめの数行で、この本は私にとってかけが…

えたいの知れない不吉な塊が私の心を始終圧えつけていた 「檸檬」 梶井基次郎

檸檬 (280円文庫) 作者: 梶井基次郎 出版社/メーカー: 角川春樹事務所 発売日: 2011/04/15 メディア: 文庫 クリック: 3回 この商品を含むブログ (6件) を見る とにかく、暗いくらい心の深淵に潜ってしまいたい時がある。生きている素晴らしさ、恋の楽しさ、…

人間がこんなに哀しいのに 主よ 海があまりに碧いのです  「沈黙」 遠藤周作

沈黙 (新潮文庫) 作者: 遠藤周作 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1981/10/19 メディア: 文庫 購入: 26人 クリック: 337回 この商品を含むブログ (240件) を見る この「沈黙」の要は、神やイエスの尊さでも、日本人が行った非道の暴露でもない。タイトルそ…